乳がん治療手記16

入院2日目〜手術当日

2005年12月6日(火)   入院2日目:家族への病状・手術説明

6時起床。病院の朝は早いぞー。外はまだ暗いぞー。

まずは検温。朝食は7時15分で、起こされてから食事までが長い......

食べ終えた頃にO先生がやって来て、食事とトイレの記録をチェック。それから、入院前にした血液検査の結果を渡してくれる。
「肝臓の数値が基準値を超えてますけど、この位なら問題ないですから」
あ、ホント。GOTとGPTが3ケタだ。
「化学療法で、この位上がるのは普通ですから」
白血球も低くて、2100。
「白血球こんなに低くて、手術出来るんですか?」
「大丈夫ですよー。2000超えてれば充分ですからね」
そうなの?あれから1週間だから、もっと増えてるとは思うけど......

昼前に母が来る。お弁当を持って来てたので、お昼は一緒に食べる。


その後I先生から、改めて私に、と言うより母に対して、病状と手術の説明。針生検の詳しい結果も見せて貰う。

エストロゲン受容体陽性:85%      プロゲステロン受容体陽性:65%

へェ〜、パーセントまで出てたとは知らなかった。
「エストロゲンが85%だったら、ホルモン療法がよく効く方ですか?」
と、期待を込めて聞いたら、
「んー、まあ100%に比べたら、劣りますけどね」
ガクッ......
「ホルモン受容体が陽性というのは、陰性と比べると予後はいい方なんですが、悪性度が3、ということで、ちょっとゴン太のタイプですね」
オオカミタイプ、ゴン太、顔つきが悪い......言い方は色々あれど、油断のならない相手、ということだ。

手術は、9日金曜の朝9時からで確定だそうだ。
「お昼までには終わるんじゃないかな」
と、先生。3時間位か。

温存で行く、と聞くと母は、
「全部取って再発しないんだったら、その方がいいんじゃないかなって思うんですけど」
と言う。 私も最初は、全摘の方がいいと思ってたんだけど、色んな本で術後の写真を見たりして、やっぱり出来るなら温存にしたい、と気が変わって来ていた。
「局所再発の可能性は否定出来ませんが、しっかり放射線をすればかなり確率は低くなります。万が一局所再発した場合は、また取ればいいことですし」
と言うI先生のお話を聞いて、母はちょっと安心したみたい。

最後に、まだしていなかった大事な質問をする。
「あの、趣味でピアノを弾くんですけど、レベルVまで郭清して、後遺症はどの位出るんでしょうか」
「ああ、全然大丈夫。手が痺れたりとかいうような後遺症出る程徹底的な郭清はしませんから。一日に10時間もピアノの練習する、って言うのなら別ですけど」
「そんなにしません(^ ^;)。せいぜい2〜3時間です」
なーんだ、良かったー。心配して損したよー。


3時半頃、母と入れ替わりに相棒がやって来る。夕食を食べ終えるまでいてくれた。

8時位に、又O先生がやって来る。何か不安や質問は無いか聞くので、悪性度が高くて、リンパ節にも転移があるので、再発リスクが高いのでは、とかなり心配だということを伝える。それと、昨日I先生から聞いたメッシュの話。体の中に残すということで、ちょっと不安。
「それって、材質は何で出来てるんですか?何か怪しげな化学物質とか......?」
と、聞いたら、
「手術でよく使う糸と似た物なんですけど、すみません、勉強不足で、正確な材質は今分からないので、調べて又お知らせします」
「あ、いえ、分ればでいいんですけど......」
そんな、お手をわずらわせる程でもなかったんだけど、ま、いいか。


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2005年12月7日(水)   入院3日目:MRI検査

昨夜はほとんど眠れなかった。昨日夕方に飲んだ緑茶がヤバかったかな。

朝食も取りに行かずに、7時半近くまで布団の中でウトウトしていたら、
「おはようございます、りまこさん!」
と、カーテンが開いて、O先生が入って来た。ゲッ......と、飛び起きる。

ハッ......しまったぁ......(゜□゜|||)


バンダナしてなーい!


あわててバンダナを頭に結んだけど、時すでに遅し。ハゲ頭をイケメンO先生にバッチリ見られたよ〜(ToT)。先生、朝早すぎ......

「昨日のメッシュの話、材質分りました。◎×◎というのから出来ていて......」
と、説明してくれるんだけど、聞いたこともないカタカナ化学用語。(スミマセン、書き留めなかったので、材質名覚えてません。せっかく調べてくれたのに、ごめんなさい......)

でもまあ、体に吸収されても安心だということは分かった。素早く調べてくれて、ありがとうございました。


11時からMRI検査。まずは造影剤を静脈注射してから、台にうつ伏せになって撮影する。注射は、最初右腕のひじの内側でして貰ったんだけど、血管に刺さらず結局左側に。いよいよ右腕の血管は、使い物にならなくなって来たかな。手術の後はこっちの腕はもう使えないから、別にいいけど。

かなりの騒音がするので、とヘッドフォンを付けてくれたけど、検査中ずっと周りで、ダダダダダ、ガンガンガガガ......と、凄まじい物音がして、流れる音楽が全くの役立たずだった。


検査の後、看護師さんから手術前後に行う事の詳しい説明がある。

「乳房温存・切除術の入院治療計画表」という日程表に沿って、一つ一つの処理について説明してくれる。その中の、「術後のリハビリ体操のビデオを見る」というのがまだだったので、その後ナースステーションに一人で座って、そのビデオを見る。パンフレットも貰ったんだけど、ビデオはそれに沿って実際の動きを見せてくれて、とても分かりやすかった。後遺症を残さない為にも、リハビリ頑張ろう。


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2005年12月8日(木)  入院4日目・手術前日:薬剤師・麻酔科医の訪問

うがいを続けているお陰か、のどの痛みは治まっている。でも、鼻は相変わらずズルズル状態。明日手術なのに、大丈夫なんかいなー。


午後、病棟の薬剤師がやって来て、手術後に飲む薬を渡してくれる。抗生物質のケフラールカプセル、胃薬のムコスタ錠、痛みのある時に飲むロキソニン錠。手術の翌日から飲み始めて下さい、ということだ。


5時半頃、友人の一人が見舞いに来てくれる。手術、入院については、友人達には退院してから知らせればいい、と思ってたんだけど、
「絶対教えてや。知らん間に手術して退院してた、なんて無しやでぇ」
と、釘を刺されていたので、この友人だけには知らせてあった。忙しい中、仕事帰りに顔を見に来てくれた。

丁度新聞を読んでいた相棒とは初対面。入って来て相棒を見た時の最初の一言が、
「あ、りまこのお父さんかと思った」
って、失礼な(^ ^;)。読書用眼鏡と、白髪頭の加減が、一瞬父に見えたんだって。

私を見て、
「やっぱり痩せたなー」
体重は2kg減っただけだから、そんなに痩せた、という感覚は無いけど、FECを始める前に比べたら、ちょっとほっそりしたかな。それに、明日手術なのにすごく落ち着いてる、って言われる。落ち着いてるっていうか、手術を受けるなんてまだ実感がわかないだけなんだけど。なんか他人事みたい。

友人は、お茶も飲まずにしばらくして帰って行った。Mら、わざわざ遠回りして、来てくれてありがとう。嬉しかったよ(^ ^)。


夕食前に、麻酔担当医の訪問を受ける。

今夜は9時以降は絶食。飲水は、12時以降禁止。毎朝飲んでいるノルバデックスも、明日は飲まないで下さい、ということだ。麻酔の合併症、危険性についての説明があって、同意書にサイン。

今回の手術で一番不安なのは、全身麻酔。そのまま寝っぱなしになるんじゃ、っていう不安がある。でも、もうここまで来たら、後は先生方にお任せするしかないよね。それにしても、全身麻酔中は人工呼吸の管を入れるなんて、知らんかったなぁ。


続いて、O先生の回診。何か気になる事があるか聞かれる。今まで漠然と思っていたのに、ずっと言い忘れていた事がある。

温存術の予定だけど、手術中万が一、これは全摘出にした方がいい、という事態になったら、迷わず全摘にして欲しい、ということ。温存可能でホッとしてはいるけど、是が非でも乳房を残したいという訳ではなく、あくまでも、再発リスクが高くならないことを最優先にしたい。

「そういう事態には、まずならないとは思いますけど。僕から伝えてはおきますけど、I先生に直接話して貰った方がいいと......」
「今日、I先生こちらに来られます?」
「来ますよ」
じゃ、I先生にも話そう。


夕食後、電話コーナーで母に電話。 明日は、8時位に相棒と2人で来てくれる事になっている。父には家でテレビでも見ていて貰うように、念を押す。

と、誰かに肩を叩かれる。振り向くと、I先生。あ、回診に来てくれてたんだ。
「今夜はよく休んで下さいね」
と、小声で言って、歩み去ろうとする。

あーー先生、待って〜。お話がぁ......

受話器の向こうでは母がしゃべっていて、中断出来ない。

あぁぁぁぁ......、

と思っている間に、I先生はエレベーターの扉の奥へと消えて行ってしまった。

あーーー、行っちゃった......


ま.....いっかーー(^_^;)


明日は絶水で喉が渇きそうだったので、寝る前に水をガバガバ飲んでから床に就く。


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2005年12月9日(金)   入院5日目・手術当日

6時起床。昨夜は、切れ切れにだけど、5、6時間程眠れた。

朝から、検温、血圧測定、浣腸、と忙しい。

看護師さんに、
「お早うございまーす。宜しくお願いしまーす」
と、挨拶したら、
「りまこさん、これから手術だというのに、爽やかですねー」
うーん、もう完全に開き直り、って感じ。

8時過ぎに、母と相棒がやって来る。

それから手術着に着替え、弾性ストッキングを履く。太腿まである長いやつで、ふくらはぎあたりはピッタリなんだけど、なんか太腿周りがダボダボ......

手術着に白いストッキング、と言う私の姿を見て相棒が、
「おッ、セクシー」
と、オヤジ丸出しの場違いな冗談を言う。お手洗いに何度か行ったのに、お腹がゴロゴロ言ってるんですけど......看護師さんに言うと、
「大丈夫ですよー。手術中にビリビリ出ることはありませんからー」
......って(゜▽゜;)。そんな可愛い顔して、そのセリフ......

8時半に迎えに来た看護師さんに連れられて、母と相棒と一緒にエレベーターに向かう。 看護師さんは、私のベッドを病室から出して、押しながら歩く。帰りは、このベッドごと戻って来るのだそう。

手術棟のある階に着いたら、母と相棒とはここでお別れ。眼鏡を母に渡したら、ド近眼の私は、もう何も見えない。

「頑張ってね」
「大丈夫だからな」
「うん、行って来まーす」
と、二人と短い会話を交わして、看護師さんの後を歩いて、手術棟に入る。

扉の向こうは、廊下が続いていて、その左側にさらに扉が幾つか並んでいる。ここで、被っている毛糸の帽子を脱いで、手術用のシャワーキャップみたいなのを被る。

「この一番の手術室です」
看護師さんが最初の扉を開けると、そこは白い部屋だった。全てがボヤけていて、よく見えないけど、円い大きな照明、その下には台があって、何人かの人達がその周りで忙しそうに立ち回っている。生まれて初めて見る、本物の手術室。まさかこんな部屋に入る羽目になるとは......

「お早うございます」
と、そこにいた女性が声を掛けてくる。
「宜しくお願いします」
「じゃ、まずこの上に横になって下さい」
手術台は、想像してたのよりもかなり幅が狭い。ちょっと体格のいい患者さんだったら、はみ出ちゃうんじゃないかな。踏み台を使って、文字通りそこによじ登る。枕の位置に合わせて横になると、同じ女性がタオルケットの様な物を手に、
「手術着とショーツを取ります」
と、手早く脱がせてタオルケットを掛けてくれる。と同時に、別の女性が私の胸に、ペタペタと吸盤を貼り付ける。
「寒くないですか?」
「いえ、丁度いいです」
「腕はここに乗せて下さい」
手術台から腕の形に小さい台が伸びていて、そこに腕を乗せる。

「りまこさん、お早うございます。よく眠れましたか」
ぼやけて顔がはっきり見えないけど、昨夜麻酔の説明をしてくれた、麻酔担当医師らしい。
「左の手の甲に点滴の針を入れますからねー。痛いのはこれだけですから」
えー、手の甲?腕じゃないのー?いたたたた......
「寒くないですか?」
と、聞きながら、点滴台に点滴パックをぶら下げる。
「もう点滴入って来てるんですか?」
思わず聞いてしまう。
「もう入ってますよ。麻酔はまだですけどね」
と、同じ腕と指先に、血圧計やら何やらの装置を取り付ける。

別の男性が、そこにある受話器に向かって、
「入室されました」
と、一言。麻酔の先生が、管に繋がったマスクを持って来る。それを私の口元に近付けながら、
「ちょっと、ゴムのような匂いがしますよ」
あ、ホント。ヘンなゴムの匂い......


............


何か夢を見ていた。その夢の中で、
「りまこさーん」 と、声がする。
「りまこさん、終わりましたよ」
麻酔の先生の声。へ......もう終わったの?早っ。
「夢見てましたー」
と言うと、そばにいた女性が、
「いい夢でしたか?」
と聞く。I先生はもういないみたい。

誰かが、何か薄い板みたいな物を私の体の下に押し込もうとしている。思わず腰を浮かせると、
「わ、めっちゃ元気」
と、看護師さんらしき声。と同時に、体がふわりと浮いて、また降りる。


............


私の乗ったベッドがガラガラと動いている。目を開けると、廊下のような所。
「あ、もう起きてる」
と、母の声。母と相棒の姿が遠ざかる。


............


看護師さんがカーテンを開ける音。私を乗せたベッドが、病室の元の場所に戻って来たみたい。ベッドの横に、色んな装置が運び込まれて来る。

看護師さんが酸素マスクを近付けて来て、
「5時間程酸素マスクを付けるように指示がありましたので。その方が回復が早いですからね」
と言う。その後ろに、母と相棒の姿が入って来る。
「先生のお話聞いてね、うまく行ったって」
と母。恐れていた全身麻酔も、ガスを当てられた途端にコロッと寝てしまったし、なんかあっけなかったなぁ。


............


それからは、目を覚ましてまた寝て、の繰り返し。父には電話で、うまく行った事を知らせた、と母。痛くないか、と度々聞く相棒。 ちょっと身動きしてみて、自分の体が色んな管や装置に繋がっているのが分かる。でも不思議と痛みは無い。まだ麻酔が効いてるんだろうけど。両足には血栓防止用の装置が付いていてそれが、シュパー、シュパーッ、と音を立てて私の足を心地よく締め付けている。
「まだ手術用の帽子かぶってる?」
急に気になって聞いてから、毛糸帽を渡して貰ってかぶり直す。

手術後の先生からの話の内容を、目を覚ました時に母から聞く。 最初の切除で切断面からがん細胞が見つかったので、追加でさらに大きく切除したこと、センチネルリンパ節も陽性でリンパ節を郭清したということ、手術は12時半位に終わった、ということ。切除した物も見せてもらったそう。脂肪みたいな、白っぽい塊だったそうな。

「これがそうです、って指でプルプルつつくんよー。外科の先生って、あんなん平気なんやねー」
相棒も一緒に話を聞いたそうだ。手術が終わって、りまこさんの御家族の方、と放送で呼ばれた時、名前を聞きつけてわれ先にと部屋に向かったんだって。
「説明聞いたって、全然言葉分からないくせにねー」
と、母。その場面を想像したら笑ってしまう。説明してくれたI先生とO先生は、さぞかし居心地が悪かっただろうなー。後で相棒に聞いたら、
「図を描きながら説明してたから、言ってる事は何となく分かった」
って、言ってたけど。

母が帰って行ってからも、ウトウトするのと目を覚ますのの繰り返し。もともと鼻がグズグズ言ってたのと酸素マスクのせいで、鼻水がタラタラ出て、目を覚ます度に相棒にティッシュを取って貰って鼻をぬぐう。最初の術後のリハビリ体操は麻酔から覚めてから、というのを思い出して、リハビリ体操のパンフレットとゴムボールも持って来て貰う。右手を動かしてみても痛みも無い。胸には三角巾が当ててあって、その下には大きなガーゼが貼ってあるみたい。左腕には血圧計、点滴、指先に小さな装置。尿の管が入っているのも分かる。手をグッパーグッパーする体操をしていると、いつの間にかまた寝てしまう。

目が覚めたら、相棒がベッド脇の装置に見入っていた。何かの数値が、私が目を覚ましたとたんに、グッと上昇するのだそうだ。心拍数かな?

夕方あたりに、O先生が顔をのぞかせて、
「痛みは無いですか?気分が悪いとか無いですか?」
と、聞いてくれる。
「もう水を飲んでいいですよ」
と、相棒に向かって英語で言ってすぐに出て行った。ありがたい。すぐに相棒に水を飲ませて貰う。

しばらくしてから、今度はI先生が来てくれる。私の顔を見るなり、
「何か顔白いね。あまり出血はしなかったんだけどねぇ」
と言う。
「先生、お疲れ様でした。ありがとうございました」
ドラマみたいに、麻酔がかかる前に、宜しくお願いします、とか先生と一言二言会話を交わせるものだと思ってたのに、先生が来る前に寝かされてしまって、挨拶も何もしてなかったな。昨夜もチャンスを逃がしてしまったし。先生は、
「ゆっくり休んで下さい」
と、すぐに去って行った。

目を覚ます度に、まずそばにいる相棒と目が合う。そしてなぜか、ニーッと笑ってしまう。すごく気味悪かった、と後になって相棒が言っていた。




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