乳がん治療手記4

全身検索検査

2005年6月1日(水)  腹部超音波検査

晴天。気温がかなり上がって、坂道を歩くのはちょっとキツイかな、とバスで病院へ。肝臓を見るので朝食はなし。乳がんと言われてからこの日まで、相変わらず夜は眠れるけど、さすがに食欲は激減した。これから体力要るんだから、と毎食無理矢理詰め込んでる、という感じ。

今日の検査も、あの美人先生の担当だった。お腹全体を一通りスキャンしてから、
「ちょっとお待ち下さい」
と、又出て行く。えー何か映ってるのぉ?実は気になってることがあるのだ。

前からお腹の中に何か塊のような物があって、これはまさか、肝臓に出来た転移......?と、この数日そのことが頭を離れなかった。胸にしこりができるちょっと前に気付いたのだけれど、仰向けに寝ておへそのすぐ上を押すと、何かそこにあるのが分かるのだ。横に細長くて握り拳位の大きさがあって、押すとグリグリ動く。これは一体何?と、ずっと思っていた。それに、それは心臓の様にドクドクと脈まで打つ。その形と言い、これって....エイリアン?と、ちょっと想像したこともある。

恐る恐るモニターを見てみると、何か丸い影が映っていた。重ねるようにしてある直線は、大きさを測った跡かな?何コレ〜〜?!(゚Д゚;)、と青くなっていると、N先生が入って来た。そして、美人先生よりも時間を掛けて見ていく。途中、
「息吸ってお腹膨らませて〜はい楽にして」
とか、
「ちょっと横向いて貰えますか」
とか言われ、その通りに動きながら、心の中で、ああ神様お願い〜(><;)!とずっと唱えていた。しばらくして先生の声が聞こえた。
「肝臓に良性の腫瘍がありますけどね。特に転移はございません」
......転移は無い......はぁ〜〜〜良かったぁ......それだけ分かれば、エイリアンが棲み付いてようが、肝臓に腫瘍があろうが、もうどうでもいい!まだ CT と骨シンチがあるのも忘れて、大きく胸を撫で下ろした。

本日の支払い: 1,650 円也。
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絶食絶水で喉が渇いていたので、支払いを済ませてから自販機コーナーに行った。そこにあるベンチに座ってジュースを飲んでいると、70歳位のおばさんが入って来た。千円札を手にして、投入口を探している様子なので、ここですよ、と教えて上げる。そのおばさんはジュースを手に、私の隣に座って、
「暑いねー」
と、話し掛けてくる。すると、もう一人もうちょっと年の若そうなおばさんが入ってきて、同じ様にジュースを買った。あ、超音波検査室の前で待ってた人だ、と思っていると、その人も腰掛けて、もう一人のおばさんと、話をし出した。聞いていると、なんと二人共、乳がんの手術を何年か前にしたそうだ。
「私も、先週乳がんって言われたんですよ」
と言うと、
「え、あなたが?まだ若いのに」
と、驚かれた。
「でも、N先生お上手だから、任せとけば大丈夫よ」
と、太鼓判を押してくれる。5年前に手術した初めのおばさんは定期検査で、12年前に手術した若い方のおばさんは、鎖骨の上にしこりを見つけて、今日はその検査に来たそうだ。
「それは心配ですね......」
と言いながら、12年経ってもそういう心配が付きまとうんだ、と改めて思った。

その後、心配しているだろうと、母に電話し、
「今日の検査では、転移は無いって。まだ CT と骨があるけどね」
と報告。思わず声が明るくなるのが自分でも分かる。とりあえずエコーでは問題ないと分かって、本当に嬉しかった。このまま映画を見に行くつもりだと言うと、母も行きたい、と言うので街で落ち合って、まずレストランでパスタの遅いランチ。久し振りに食事がおいしい、と感じた。その後、ずっと見たいと思っていた「ハウルの動く城」を見に行った。

その夜、相棒にも電話して、今日の検査の結果は大丈夫だった、と報告。

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2005年6月3日(金)  3つ目の悪いこと

相棒がメールでとんでもないことを知らせてきた。

昨日帰国して初めて、ATM でお金を引き出そうとしたら、残金無し、と出たので調べて貰ったら、なんと誰かが残金を全て引き出していて、スッカラカンにされていたと言うではないか。驚いて相棒に電話して、どういうことか聞いてみると、どうやら偽のカードで何回かに分けて現金引き出しされた上、相棒の名前で新しい口座が開かれそこに残り全てが振り込まれて、その後その口座は解約されていたのだそうだ。

「信じられない。どうやってそんなことできるの?」
と、呆れて聞くと、
「さぁ。とにかく、今専門の調査員が調べてる」

イギリスの普通の大手銀行で、こんなことが起こるなんて。聞くところによると、現金が引き出されたり、偽口座が開かれたりしたのは、私達がニュージーランドにいた頃なのだそうだ。長い間相棒の口座が使われていないことを知った誰かの仕業かもしれない、と言うことで、調査員は銀行内の誰かが何らかの形で関与してるかもしれない、と見てるそうだ。

とにかく、相棒の責任でないことが証明されれば、全額返金する、と銀行は言ってくれたそうで、安心した。
「当たり前やん、そんなん」
と思う。大体易々と偽のカードを作られたのは、安全対策が追い付いてないせいだろうし、偽の口座を開かれたのだって、身元確認を十分にしなかった銀行側の責任じゃないの。
「もうこの銀行には、預金したくない。お金が返って来たら、よその銀行に移す」
それも至極当然。
「これで 3つそろった。もう悪いことは起きないよ」
実は私の病気が発覚する前、相棒のお母さんの認知症が酷くなり、とうとう相棒のことが分からなくなってしまったそうなのだ。そして私の病気が分かった時、相棒はメールで、
「これで悪いこと 2回起こった。後1回は何だろな。楽しみや」
なんて、冗談書いて寄こしてたのだ。
「まさか、こんなことが起こるなんて意外だったけど、もう悪いことはこれでおしまい」
と、もう一度言う。そう聞くと、残りの検査も大丈夫かな、と思ってちょっと安心してしまう私......

相棒に、当面のお金はあるのかと聞くと、クレジットカードと予備のトラベラーズチェックがあるから大丈夫だと言う。まあ近くにお兄さんもいるから、いざとなったらそちらに頼めるだろうけど。
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2005年6月4日(土)  友人に告白

今日は、友達二人と夕食に行く日。病気のことは言わない方がいい、と思った。半年振りに会うのに、暗い話はしたくなかった。

近況を報告しあったりして一通り話した後、
「りまこ仕事探してるの?」
と聞かれる。治療の区切りが付くまでは、仕事は無理だろうな、とは思っていたけど、
「うん、仕事は始めたいんだけど」
と、曖昧に答える。その後、どこか皆で旅行したいねー、と言う話になり、その時も旅行かー行けるかなーと思いながらも、友達の話に合わせて、
「そうやねー」
と、答えるしかなかった。

その後、その友人の一人から電話があった。
「うちの職場で、アルバイト探してるんやけど」
あー、これから先、病気のことずっと言わないわけにはいかないなー、と思う。
「それがさぁ、この前は言わなかったんだけど......」
と、乳がんだと言われたことを話した。
「えー、うそー?!りまこが?」
と、やっぱり驚いた様子だった。はー、ゴメンね、こんな話。でも、ずっと隠してるのもしんどいからねぇ。
「旅行なんて言ってる場合ちゃうやん......」

その後、話を聞いたもう一人の友人からも電話が掛かってきた。
「えー、ショックー」
そうだよねぇ、何て言ったらいいか分からないよねぇ...... 
「今、若くてなる人が多いみたいだから、気を付けた方がいいよ」
と、一応検査を勧めておいた。

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2005年6月7日(火)  CT 検査

その日も晴天。CT 室に入ると、部屋の真ん中に大きな機械がでんと置いてあった。部屋の壁の一つの上部がガラス張りになっていて、その向こうに、椅子に座った人や立って何かしている人が見える。

上だけ脱いでそこにある検査着を着ると、
「まず初めに、造影剤無しで撮ります。腕はバンザイみたいに上げて下さい」
と、そばの白衣の男性に指示される。言われた通り台の上に仰向けになって、両手を頭の上に持っていき待っていると、台が動いて白い洞穴のような機械の中へ滑って行った。機械が音を立て始める。こんなイカメシイ機械で胴体の輪切り映像を撮影されるなんて、大変なことになってるんだなぁ。

しばらくしてから、
「じゃ、息を大きく吸って止めて下さい」
と声がした。時々する機械の音を聞きながら、狭い洞穴の中で何度も息を吸ったり吐いたりする。私の肺には、何か写ってるんだろうか......

いったん洞穴から台が出て来ると今度は、
「造影剤を入れますからね」
と別の男性が、採血する要領で腕の血管に針を刺す。針は細い管で注射器と繋がっている。看護師さんが針をテープで固定させて、注射器を持ち上げながら、
「造影剤が入る時、体がカアッと熱くなるけど、びっくりしないで下さいね」
と言った。

「じゃあ、もう一度撮ります」
と男性の声がして、再び台が洞穴の中へ。
「造影剤入りまーす」
と声がしたかと思うと、腕の辺りから太腿の辺りまで、一瞬の内にかっと熱くなった。続いて機械がウィーンと唸る。目を閉じて、まだかなぁ、まだかなぁ、と思っていると、
「ハイ、おしまい、です」
と近くで声がした。

目を開けるとすでに台は洞穴から出ていて、そばにムーミンパパを思わせる雰囲気の男性が立っていた。その男性の顔を見たとたん、訳も無くホッとする。それから看護師さんに針を抜いて貰って、やっと終わり。

本日の支払い: 10,850 円也。
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2005年6月8日(水)  骨シンチ検査

翌日、骨シンチ検査の日。別の系列病院での検査だ。

まずアイソトープという微量の放射性物質を含む薬を注射して、薬が回るまで2時間程時間を潰さないといけない。朝、そう母に言うと、
「じゃ、私も行っていい?待ち時間の間、あの辺ブラブラしよっか」
と言ってくれたので、二人して電車で病院へ。以前働いていた会社の近くで、懐かしい。

検査室で静脈注射してもらった後、看護師さんに、
「食事も自由にしていいですからね」
と言われたので、近くでお好み焼きを食べる。その後、ウィンドウ・ショッピングをして時間を潰した。

時間が来て、母とは又45分後に落ち追うことにして、再び病院へ。お手洗いを済ませておくように言われていたので、受付フロアで済ませてから検査室に戻る。ショーツと靴下以外は全部脱いで、検査着に着替えてから、重い扉の向こうの部屋に案内される。そこには CT のとよく似た機械があった。鳥のさえずりがスピーカーから聞こえてくる

細い台の上に横になると、しばらくしてから機械の穴の中へと台が入っていく。かなりの時間、時々動く台の上に横になっていたと思う。気が付くと、鳥のさえずりはクラッシック音楽に変わっていた。えらい時間掛かるなぁ。時計が無いから分からないけど、もうすぐ30分位になるんじゃないの?お母さんと待ち合わせしてるのにー。スピーカーからは、又鳥のさえずりが聞こえていた。どうやらクラッシック音楽と、交互に流してるみたい............

気が付いたら、爆睡してヨダレ垂らしそうになっていた(^_^;)。台が穴の外に出たと思うと、技師さんがやって来て、
「頭を撮るので、横を向いて下さい」
と言って、又穴の中へと送られる。一体いつまで掛かるのー?
「もう、後10分位です」
やっと、そう言われてホッとする。機械の調子が悪かったのか、それとも慣れてない技師さんだったのかな?

本日の支払い: 15,640 円也(ToT)。
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支払いを済ませると、母と別れてからすでに1時間以上経過していた。あーー、お母さんごめーん!待ち合わせ場所に急ごうと、病院を出たところで、母とバッタリ出くわした。
「ごめん、思ったより時間掛かって」
と言うと、
「イヤ、そんなことだろうなー思って、ちょっとその辺ブラブラしてたんよ」
......だって。

その夜相棒から電話。今日の検査の様子を話して聞かせると、結果はいつ出るのか、と又聞く。
「月曜日。もうあの病院になんて二度と行きたくない......」
と、つい弱音を吐いてしまう。結果を聞くのが怖い。もし転移してたら......


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