乳がん治療手記7

情報集め〜転院

2005年6月21日(火)   ネットカフェ通い

インターネットで情報集めを始めるに当たり、ちょっと問題がある。実は今だにブロードバンド契約しておらず、去年まで利用していたプロバイダーがダイアルアップサービスを停止してからは、無料のダイアルアップ接続を使っていた。一つページを表示させるのに1分以上掛かる時もあり、痺れを切らして時々近所のインターネットカフェを利用していた。高速の快適な環境でネットサーフィンを経験して、ますます家のダイアルアップ接続を使うのが苦痛になっていた。抗がん剤治療について調べる、という目的が出来、昨日も早速ネットカフェで数時間過ごした。

ざっと情報を集めてみた結果、やはりアドリアマイシンやエピルビシンといった「アンスラサイクリン系」抗がん剤の後、タキソール又はタキソテールといった「タキサン系」を投与するのが私の場合一番のように思えた。また、術前にはタキソテール(ドセタキセル)がより有効という記事もあった(追記:この記事の元になった臨床試験では、投与量がタキソールは少なくタキソテールは多かった為この様な結果になった、他の臨床試験ではタキソール毎週投与の方が勝っている、という記述を後に見つけました。)。大急ぎで調べた結果だけれど、

と自分の中で結論付けた。臨床試験では「アンスラ」と「タキサン」を術前術後に分けて行うし、「タキサン」はタキソール(パクリタキセル)を使用するとのことなので、試験参加はお断りしないといけない。私が受けたい治療法があるのも、こういった臨床試験に今まで協力した多くの患者さん達がいたからだ、というのは良く分かるし、協力せずに申し訳ないという気持ちもあるけど、とにかく自分の納得の行く治療をしたい、というのが本音だった。

心臓エコーの予約が入っている木曜は、ちょうどN先生の診察日だ。私の希望する投与法で治療してくれるかどうか聞いてみよう。この前の診察の時のN先生の口調からは、病院で投与法が決まっていて、患者によって違う抗がん剤や投与法を使う、というのはしないのかもしれないけど。もし断られたらその時は、病院を変わるしかない。そういう可能性も踏まえて、今日は朝から乳腺専門医のいる近辺の別の病院にセカンドオピニオンの申込書を取りに行った。ところが、実際に専門医と面談出来るまで、1〜2週間掛かると言う。告知を受けてから、気が付けば既に3週間以上過ぎている。もう余り時間を無駄にしたくない。

次の日思い切って、専門医のいるいくつかの病院のホームページで見つけたEメールアドレスにメールを送った。駄目もとだけど、それぞれの病院でどの投与法を行っているか、をたずねた。メールでこんな質問して失礼ではとも思ったけれど、私の中で刻一刻と時計の針が回っていて、もうなりふり構ってなんかいられなかった。
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2005年6月23日(木)   心臓エコー、外科診察

心臓エコー予約の日。エコーの時間の1時間前に病院に行き、機械でN先生の予約外診察を申し込んだ。

1時間近く経って、そろそろエコーの方に行かないと、と思っていると、看護師さんから呼ばれ、
「先にエコー検査に行って来て下さい」
と言われ、超音波室に向かう。今日は美人先生ではなかった。

外科診察では、
「心臓エコーは特に問題ないですね。それで、考えて頂けましたか」
と、N先生。
「大変申し訳ないんですけど、臨床試験はお断りしたいんです」
「......それじゃ、どうするんですか」
私は、集めた情報を書き留めているノートを開いて、前もって考えておいた台詞を言った。
「色々調べて、私の病状にはACの後タキソテールを術前にするのが一番じゃないか、という結論になったんですが。これは素人が情報を集めて得た結論なので、後は専門家である先生のご意見をお聞きするしかないんですが......」
「確かにそういう情報もありますけど、実際にちゃんとした論文で発表されているわけではないですよ。私はECとパクリタキセルをどちらか術前術後にする方法で十分な効果があると考えますけど」
「ホルモン陰性HER2陽性の方が奏功率はいい、という情報もありましたけど、私の場合全くの反対で、効く可能性はどのくらいなんですか?効かなかったらどうするんですか?胸筋にも浸潤してるかもしれないって、筋肉も取るってことですよね?」
思わず、ずっと心配していたことが口を付いて出て来た。
「筋肉はちょっと削ればいいだけですよ。ハルステッドは今ではもうほとんどしません。効かなかったら、試験を中止して別の薬に変えればいいじゃないですか」
そうか、そういう手もあったんだ。
「じゃあ、もし効かなかったらタキソテールを試してもらえますか」
「......うん、いいですよ」
それなら......と思いかけたところで、
「あ、でもECとTどちらを先にするか自分では決められないんですよね」
「そうです」
ECが先になればいいけど、Tが先になったらタキソテールを使う機会が無くなってしまう。ああ、やっぱりだめだ、決められない。
「......すみません......あと少し考えさせて下さい」
結局すごすごと退散。また、治療が先延ばしになってしまった......

本日の支払い: 3,220 円也。
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その後、Eメールをチェックすると、驚いたことに質問した全ての病院の医師から返事が来ていた。術前化学療法をする場合、術前にEC術後にTをする病院、そして、術前にドセタキセル続いてアンスラサイクリン系をする病院もある。それにしても、どの先生方もお忙しいだろうに、突然の質問のメールに丁寧に答えて下さっていた。時間を見ると真夜中に返事をして下さっている先生もいて、感謝に絶えない。本当にありがとうございますm(_ _)m。
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2005年6月26日(日)   ブロードバンド加入を申し込む

病気が分かってから情報を集めるのに、ネットカフェ通いが続いていた。特にこの1週間は連日通い詰めで、日によっては2度行くこともあった。今日も出掛けようとすると、
「程々にしないと、きりないよ」
と、母に言われた。でも、命が懸かってる時に程々になんて出来ない、と思う。

とにかく今のままではネットカフェの費用がかさむばかりなので、Yahoo!BBに加入することにした。目的はネットサーフィンで、動画を見たりネットゲームをしたりはしないので、一番安い8MのADSLを申し込んだ。今までネットカフェにつぎ込んだ値段を考えると、もうちょっと早くに思い立つんだったなぁ。


2005年6月27日(月)   転院希望を告げる

この数日、どうするか悩みに悩んだ。

臨床試験を断って術前にアンスラサイクリン系とタキサン系を両方して欲しい、と強く言えば恐らくN先生は希望通りにしてくれる、という気がする。でも、臨床試験を断ることによって、気まずい思いをするんじゃないか。これから何年も治療をしていかないといけないのに、そんなストレスを抱えるのがいやだった。

気持ちは転院しよう、という方向に傾いていた。が、転院の手続きに加えて新しい病院で再検査とかになれば、また治療が遅れてしまう。告知を受けてから、もうすでに1ヶ月。ぐずぐずしている今の瞬間にも、がん細胞がリンパの流れに乗って全身を回り出すんじゃないか。それに次の病院の先生と必ず馬が合うとは限らない。

悩んだ末、結局転院しようと決めた。正直、専門家であるN先生を前に、自分の希望をきちんと主張できる自信がなかった。友人にどうするか悩んでいる、とメールを送ると、
「今、りまこがいいと思う決断をしないと後で後悔するよ」
と返事が来て、心が決まった。転院先は、メールで返事をくれた病院の一つで、アンスラサイクリン系とタキサン系を両方術前にしている所に決めた。

この日の予約は、朝一番。診察室に入り挨拶すると、N先生は足元に置いてある紙袋からファイルを取り出し、それを広げてグラフを2つ私に見せてくれた。一つはACの後タキサン系を投与した場合の成績で、もう一方のグラフと比べて数%無病生存率が高い、ということだった。先生にしてみれば、たった数%しか違わない、ということが言いたいのかもしれないけれど、私にしてみれば再発しない可能性が、わずか数%でも高い方を選びたい。

とにかく、もう転院の決意を固めていたので、
「今まで色々お世話になっていながら大変申し訳ないんですけど、病院を変わろうと思うんです。それで紹介状を書いて頂けますでしょうか」
と、切り出した。もし何か言われた時どう言うかも前もって考えていたのだけれど、先生は、病院名と医師名を尋ね、
「じゃあ、今日中には無理ですけれど、明日までには用意しておきます」
と言ってくれた。良かった、とほっとする。
「今までの検査の画像もお借りできますでしょうか」
「エコーの画像は無理ですけど、それ以外のものはお貸しできますよ」
と言う事で、明日の夕方取りに来る手はずとなった。
「お忙しいのに申し訳ありません」
と言うと、
「仕事ですから」
と、あっさりしたものだ。今までお世話になったお礼と、お忙しそうなのでお体にお気を付けて下さい、と心から言って出て来た。

本日の支払い: 880 円也。
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次の日、暑い中ふうふう言いながら坂を登って行き、検査フィルムと紹介状を取りに行った。フィルムの入った大きな封筒を手渡してくれた看護師さんが、
「がんばってね」
と言ってくれ、嬉しかった。

これで転院第一段階は無事終了。
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2005年6月30日(木)   新しい主治医、採血、乳腺超音波検査

紹介状の宛名にしてもらった医師の診察日は木曜と言う事で、朝から電車を乗り継いで転院先に決めた病院へ向かう。

自宅から45分程掛かるけど、まあ許容範囲内かな。がん専門の病院や大学病院も考えたけれど、どれも家からは遠く、通うにはちょっと不便だ。「自分の納得のいく治療」をしてくれて、年間手術実績もそこそこあり、通うのにもさほど不便ではない、という面から必然的にこの病院になった。そして、メールでの私の質問に大変丁寧な返事をくれた、というのも一因だけど。

この病院での術前化学療法は、タキソテールを先にしその後FECというのを行う。FECはECにさらに5−FUというのを加える投与法。メールでの返事によると、タキソテールはアンスラサイクリン系に比べ吐き気等の副作用が少ない割には切れ味が良く、腫瘍が縮小するのを実感できる場合が多く、患者さんの励みになる、という理由でタキサンを先にもってきているそうで、それには私も納得している。

当面の心配は、新しい先生がどんな先生か、ということ。メールではとても好感が持てたのだけれど、これだけは会ってみるまでは分からないからねぇ。ま、ここまで来たら自分の決断を信じるしかない。

このI先生も大勢の患者さんを抱えているらしく、診察室の前ではかなりの人達が待っていた。待ち時間の間、どんな先生かなー、とそのことがやっぱり心配でずっと落ち着かなかった。

2時間近く待ってから名前を呼ばれ、診察室に入って行くと、そこには何となくほんわかした雰囲気の先生が座っていて、ああ良かった、大丈夫だ、と思った。
「紹介状読ませてもらいましたけどね、悪性だという確定は受けてるんですね。えーと最初にニュージーランドで診てもらった?」
N先生そこまで書いてくれてるんだ。そして大きな封筒を開けて検査フィルムを一枚一枚見て行く。CT画像の、リンパ節が腫れているのを見て、
「んんッ?」
と目を近付ける。また紹介状に目を通しながら、
「腋下リンパ節クラス5......ほう、ちゃんと細胞診で調べたんだ。腫瘍マーカーは基準値内、か。AC−T療法を希望されてる、と......」

そこで用紙を取り出して術前化学療法について説明する。続いてこの病院ではT−FECという投与法を取り入れていること、そしてその理由を、私が先週突然メールで質問して来た張本人であると気付いているのかいないのか、もう一度説明してくれる。その治療でお願いします、と言うと、
「じゃ、ちょっとエコーで見てみましょうか」
気付かなかったけど、診察室に超音波装置が置いてあった。

エコーで見てもらうと、腫瘍の大きさはやはり25mm。腋の下辺りを触診しながら、
「ああ、ここのしこりもはっきり触れますね......」
と言うので、驚いた。
「ええー?自分では全然分からないですけど」
「ほら、ここにありますよ......あ、そうしたら分からなくなるけど」
手を上げて自分でも触れてみようとしたけど、何やらコツがあるみたい。

その後、治療はいつから始められるか聞かれて、早い方がいいです、 と答えると、
「じゃ、来週から早速始めましょうか」
と言わる。
「えっ......」
と、思わず引いてしまった。来週から抗がん剤......早く治療を始めたい、とあんなに焦っていたのに、いざ抗がん剤投与を来週から、と言われるとビビってしまう。
「まあ、いつでも変更は出来るので」
と、I先生は首からぶら下げている携帯電話でどこかに電話をして、化学療法の予約を取ってくれた。いよいよ治療が始まるんだ。もう逃げられない。

「化学療法中は骨髄抑制と言って白血球の数が減るので、投与の前と1週間後に血液検査をして数値を観察します。今日はこの後採血して貰って下さい。それからお時間空いてるようでしたら、超音波で腫瘍内の血流パターンを見たいんですけど」
と、またどこかへ電話する。
「それと、色んな所からこういうのがあって......」
と、小冊子を4冊渡してくれた。抗がん剤治療を受ける患者向けの冊子だった。

「あの、質問があるんですけど......」
「何ですか」
「腋の下のリンパ節の転移ですけど、お風呂でゴシゴシ擦ったりして大丈夫なんでしょうか」
「普通に洗うのは問題ないですよ」
「それと、お風呂で温まって血流が良くなったら、血液の流れに乗ってがん細胞が体中に散らばるんじゃ、って心配なんですけど......」
I先生は笑って、
「そんなこと言ってたら、ちょっと腕振るだけでも血流は良くなるんだから。そこまで心配しなくていいですよ」
入浴する度に、この疑問が浮かんで怖かったのだけれど、N先生にはこんな質問出来ずにいた。お風呂には普通に気にせず入っていいのね。

診察室を出ると、看護師さんから指示を受ける。今日の午後の超音波室での乳腺エコー予約と、来週の化学療法1時間前の診察予約、そしてこのすぐ後に採血。持って来た検査画像のフィルムはコピーを取るのでしばらくお借りします、ということだった。

とりあえずは、これで心配事が一つ減った。今日の印象では、I先生とはうまくやっていけそうな気がする。私のバカな質問にも丁寧に答えてくれたし。

その後、採血室で採血して貰って、エコーの時間までは、近くのハンバーガーショップで昼食を取ったりして時間を潰した。超音波室でのエコーは、女性医師が診てくれたんだけれど、えらく時間が掛かった。1時間近く診てたんじゃないかな。途中、エコーして貰いながらうつらうつらしてしまった。

本日の支払い: 6,760 円也。
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2005年7月2日(土)   派遣会社からの電話

昨日は相棒に電話して、新しい主治医とはうまくやっていけそうだということ、来週から化学療法を始めることを話した。あちらでは、やっとお母さんを新しい病院に移せて、やれやれという感じだった。今は、家中掃除するのに大忙しのようだ。家具は大方処分して、小物も余った物は全てチャリティーショップに寄付するということだった。

そして昨日は、ブロードバンドのセットアップに四苦八苦した。サポートセンターにも電話してやっと接続することが出来た。やったー、これで時間を気にする事無くインターネットを利用出来るぞ。

そして今日、登録していた派遣会社の一つから電話があった。なんと希望していた条件で、英語を使う仕事があると言う。去年一昨年とあんなに探していた時はなかなか無かったのに、何で今頃......ほんとタイミング悪すぎ(T_T)。しばらく病気治療になるので、ということで泣く泣くお断りした。頻繁に病院通いする身では、やっぱり無理だよねぇ......あぁ、クヤシィ〜〜!!


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